メンバーのご挨拶&おすすめ本紹介⑥【原田編】


この写真は企画とは何も関係ありません。ただの自慢です。 お金をかけて苦しい思いをして見えた景色は一生話のタネになると思います。
はじめまして。「ジブン×ジンブン」発起人の一人、原田です。
自己紹介シリーズもなんだかんだで最終回です。今までの方々と比べると少し変わり種で申し訳ない気持ちもありますが、お付き合いください。

なにをしているのかちょっとだけ紹介

ぼくは東京大学大学院 工学系研究科 社会基盤学専攻 水圏環境グループの修士一年です。


...ん?あなた理系ですよね?ってみなさん思いましたよね。
そうです。学部時代からずっと「がっつり理系」の人です。どうしてこの企画に携わっているかは専門の話をすれば少しはお分かりいただけると思いますので、まずはぼくの専門についてお話しましょう。


さて「社会基盤学」というと格好よく聞こえますが、専攻の元の名前は「土木工学」です。(でもネーミングって馬鹿にできなくて、学部の話ですが「土木工学科」から「社会基盤学科」に名前を改称してから女子学生の比率が増えたとかなんとか…)
建築学や都市工学と合わせて「土木三学科」なんて呼ばれたりしますが、他の二学科に比べても扱う領域はとても広く、橋梁やコンクリートや河川海岸といったいわゆる「ハードな土木」から、交通計画や国際協力や建設マネジメント、はては景観といった「ソフトな土木」まで幅広く研究対象としています。


八ッ場ダムの建設風景。ダム一つをとっても地盤・コンクリート・治水計画・建設マネジメントなど関係する領域は多岐に渡ります。 これを見てテンションが上がる人は是非当専攻に。(筆者撮影)
そうした社会基盤学専攻の中でも、ぼくが所属する水圏環境グループは水が関係することならなんでもやろうというグループです。水圏環境グループはさらに河川・海岸・水文の三つの研究室に別れ、その「水文(すいもん)」研究室に所属しています。


また聞いたことのない言葉が出てきましたね...「水文」とはなんでしょうか。尊敬する研究室のボスのお言葉を借りて説明するならば、「天文学が天体を通じて宇宙の神羅万象を解き明かす学問ならば、水文学は水を通して地球の神羅万象を解き明かす学問」です。もう少し噛み砕いて言えば、地球の水循環とその変動の解明を通じて世界が抱える様々な問題を解決していこうという学問です。例えば...


「どうして水不足って起こるの?」 
「地球温暖化ってどう人間社会に影響を与えるの?」 
「てかそもそも地球は本当に温暖化してるの?」 
「日本は今後迫り来る災害に対してどうすればいいの?」


などなど理学的に現象のメカニズムを解き明かすところから、工学的に社会実装を考えるところまでひろーく守備範囲です。


その研究室の片隅でぼくは「気候変動が人間活動に及ぼした影響」について研究しています。「こいつは何を言っているんだ...」とみなさんが眉間にシワを寄せているのが容易に想像できます。話すと長くなってしまうので簡潔に言えば、実は水の同位体比(δ18O)というものを通じて水の循環過程を解き明かすことが可能です。また、水は地球上の生物の体にかつての気候を記憶するマーカーとして取り込まれるため、それらの解析を通じて古気候の復元を行うことができます。とっても夢のある話だと思いませんか?いつも見かけるあの木から1000年前の天気や気温がわかるかもしれないんです。


ぼくは歴史(学)が好きです。だからこの研究を選びました。先人たちが歩んだ道のりや刻んできた足跡から、当時の人々の息遣いや想いを汲み取るそのプロセスが好きで好きでたまりません。「長い歴史の中で、人は抗いきれぬ自然の力を前に屈せざるを得なかったこともあっただろう」、そうした仮説を胸に「理系」という大きなバックグラウンドを活かして定量的に歴史に迫る、そのような研究ができているのでとても幸せです。


ンゴロンゴロ国立公園にて。こうした木から歴史の営みを読み解くのがぼくの研究。(筆者撮影)


この企画への想い

そうした研究生活の中で、理系と文系の研究者が同時に所属する学会や研究会に参加する機会も少なくありません。その中で聞こえてくるのは「相手の使ってる言葉・言っていることがわからない」といったすれ違いの声です。確かに研究分野によってお作法や用語のようなものがあり、当然ながら文系と理系では大きく違うことは事実です。しかし分野横断が声高に叫ばれる中にあってもなおこのようなすれ違いが起こっているのは、異分野に対しての「理解」を半ば諦めているような現状が原因ではないかと考えています。また研究の世界ですらそうしたことが起こっているのですから、大学の外からは研究者が何をしているのかわからないというのが正直な感想なのではないでしょうか。


また人文学に限らず、ぼくの専門である水文学もじわじわと携わる人が減っています。先日参加した学会でも「グローバル化が進む世界の中で日本の水文学が今後どのようにプレゼンスを発揮していくか真剣に考えなければこの分野の未来はない。水文学という分野があるということをキチンと次の世代に伝えることが重要だ」とパネリストの先生方が危機感をもって訴えていたのが印象的でした。


学問を支えるのは他でもない「人」であり、もっと言えば次の世代を担う学生なのです。もちろん国の政策として大学の予算が毎年減らされている厳しい局面にあることは事実だとは思います。さらに教授や研究者など学問に携わる人としても、研究や雑多な業務に追われて次世代に対してアピールするような時間がないのもまた事実だろうと思います。しかしながら少子高齢化が進み学生の母数が減ることが明らかであるにも関わらず、人文学の危機と言いながら次世代に対して何も手を打たないのはまずいのではないでしょうか。
つまり学問を巡る現状として


①学問に直接携わっていない人はおろか携わっている人でさえも、研究者が何をしているのかを理解することは困難であると感じている
②人不足を実感しながらも次世代の学生に対してのアピールが足りていない学問分野が多い


の二点が問題としてあげられると考えます。
であるならば(教授に比べれば時間があると思われる)現役の学生が次世代の学生や人文学のことについてよく知らない人を対象の中心として、まずは人文学の存在を伝えること、そしてあわよくば興味をもってもらうことを目的に駒場祭という場で企画を行おう!というのがそもそものはじまりです。

好きなこと

・ゲームが好きです。ただし強いわけではなくて、友達とくだらない話をしながらパーティゲームをダラダラやるのがこの上なく好きなだけです。こないだマリオパーティ4をやろうと思ったら、Wiiのパッケージにしまってあったせいで取り出すときにディスクが割れたのが死ぬほど悲しかったです。エアライドは絶対に割らない。
・ボードゲームも好きです。理由は同上。以下で説明する企画を担当しているのも好きだから、それだけ。家にもたくさんボードゲームありますが、おすすめはパンデミック。騙されたと思って一度やってみてください。何度夜を明かしたことか。
・野球観戦が好き。阪神を応援しています。猛虎復活を願っていつまでも応援し続けるだけです。
・映画が大好きです。映画のいいところはマルチメディアであり、そこから色んな方向に興味を発展させられるところだと思っています。生涯の一本を選ぶなら「オーシャンズ11」。無難だねーってよく言われますが、マイナーなの言ったらリアクションが返ってこないんだもの...
・漫才やコントもよく観ます。卒論執筆中にBGMとして聞いていたくらいには同じネタを何度もみます。漫才だとしゃべくり漫才、コントだと東京03みたいなリアル系が好きです。
・美術館や博物館も最近行き始めました。ミケランジェロ展のクピドのお尻がプリンプリンでした。

おすすめの本

専門に関わることで本を読むことはあまりないのですが、土木という分野が日本において歴史的にどのように受け入れられてきたかを知るのにうってつけの一冊を。


・『国土の変貌の水害』(高橋裕著、岩波新書)
他分野の例に漏れず、やはり土木においても明治維新が一つの大きな転換点となるわけですが、その中でも治水対策は大きな変革を迎えました。簡単に言えば霞堤などのように河道から水を「あふれさせる」ことによって治水を行なっていた従来の方法を、西欧科学技術に基づき河道に水を「とじこめる」ように変化させたのです。

そのために直線化された河道は確かに大きな利益を日本にもたらしましたが、一方で主に戦後の都市化との間でジレンマを抱えていました。そうした日本の「国土の変貌」と「水害」との関係を扱った良著です。

著者の高橋裕氏は「水」の国際的権威であり、その国内の治水施策と途上国における水災害軽減への学術的貢献から国内外でも高い評価を受けておられます。この本は彼がおよそ50年も前に執筆したものですが、今もなお色褪せぬメッセージが読者の心を打ちます。


企画紹介

いかがでしたでしょうか。「理系」がこの企画に加わっていることに驚いたかもしれません。もしかしたら大学には「理系」でも歴史に関わるような研究ができるような幅広さがあると思っていただけたかもしれません。いずれにせよ少しでもぼくの企画への想いが伝わっていればと思います。さて最後に担当している企画について少しだけ紹介して終わりたいと思います。


・学問諸分野の比較
人文学をはじめ、経済学や法学を含む「文系」と工学や理学などの「理系」に大別される諸学問ですが、扱う対象以外にどういった違いがあるのでしょうか。東京大学における学部をその分類の中心に据え、研究手法にはじまり予算や今後の展望まで、現役の学生へのインタビューをもとにスライド形式にしてみなさんに伝えます。


人文学ボードゲーム
ぐるっと企画を見て回ったけど、実際人文学徒はどんなことをしているの?という疑問に、ボードゲームを利用して「学問して」もらおうという企画です。人文学に限らず学問の大きな部分をなす「批判」という営為を、ゲームの力を借りて楽しく体験してみてはどうでしょうか。


人文学って難しそうだなぁ...と思っている人も少なくないのではないでしょうか。本企画では「理系/文系」「学生/社会人」など立場を問わず、わかりやすくかつ楽しくお話できればと思っていますので、駒場祭当日の1号館入ってすぐ左の112教室でみなさんをお待ちしています!


「ジブン×ジンブン」企画ID:386
第69期駒場祭にて開催東京大学駒場キャンパス(東京都目黒区 京王井の頭線・駒場東大前駅東口よりすぐ)
会場:1号館1階 112教室
日時:2018年11月23日(金)9:00-18:00/11月24日(土)9:00-18:00/11月25日(日)9:00-17:00
※25日(日)のみ終了時間が早まりますのでご注意ください。

入場料:無料(任意カンパ制)

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