メンバーのご挨拶&おすすめ本紹介⑤【大泉編】


いよいよ自己紹介も残すところあとわずかになって参りました。はじめまして。法学政治学研究科修士課程1年の大泉と申します。ジブン×ジンブン企画に参加しています。

何をしているのかちょっとだけ紹介


 私の所属は法学政治学研究科、総合法制専攻、基礎法学コースです。法学や政治学は、一般的には人文[科]学(humanities)(翻訳元にscienceが含まれないので、仮に科を[ ]で括っておく)ではなく、社会科学(social sciences)に分類されます。人文[科]学と社会科学は、日本では、前者には哲学、歴史学、文学など、後者では政治学、法学、経済学、社会学、歴史学、文化人類学などを漠然と指すことが多いようです。私は法学のうち、基礎法学を学んでいるため、以下で法学の区分を示そうと思います。

まず、法学の研究分野は、実定法学と、基礎法学に分けることができます。
 実定法学とは、現在効力のある、憲法、民法、刑法といった制定法、判例、慣習を対象として、現実の法実用に供されることを想定して法を分析する立場です。
基礎法学とは、それに対して、法哲学、法史学、法社会学、比較法学などが含まれ、理論として法の性質を明らかにする立場です。
・基礎法学の中で、私の周囲には、法史学(法制史)の系譜に連なる人が多いです。
法史学とは、法の在り方を歴史的な視点から考える学問分野です。

  法史学の概要は上述のように捉えて問題ないと思いますが、日本の法学史は西洋法の継受(と固有の法との断絶)を経験しているので、日本法の成り立ちを考える際には西洋法の成立史を参照しなければなりません。(この点は、ジブン×ジンブンの他の自己紹介でも、他の分野から廣川さん木村さんが言及されていますね。)例えば、所有権のような一般的な法概念でさえも、その起源はローマ法(古代ローマで発展した法体系)に由来しており、この概念を明確に認識しようとすれば、少なくとも日本が継受しているドイツの学説を参照しなければ、日本の法学といえども確かな輪郭を掴めません。近代以前以降で全く異質な法体系を発展させている日本において、法史学(分野としての法制史に限らず、それに関心を持つすべての法学)の研究者たちは分野によらずこの問題を先鋭に意識しています。



法史学と一言で言っても、その範囲はとても広いです。例えば、西洋の13世紀の教会法の研究、鎌倉時代の古文書の研究、魔女裁判の研究といったものがありますから、幅広いものです。しかし、系統的な観点から見れば、東大の法制史界隈には、脈々と受け継がれている側面もあります。そのうち特に重要なのは方法論です。つまり、対象とするテクストを精査して、その意味内容を慎重に捉えていくという伝統です。古い時代に書かれたテクストの意味内容を、まずはそのテクスト自体に即して明らかにすること、それが当時の時代状況という文脈の中でどう位置付けられるのかを慎重に吟味すること、これらが法史学の研究者たちに(分野としてというよりは)系譜的に共通している意識だと思います。
 
 私が扱っているのは、17世紀の哲学者、バールーフ・デ・スピノザです。従って私の所属は必ずしも私の研究対象と一致しているわけではありませんが、一つにはこうした法史学の方法論を学ぶことが、スピノザのテクストの読解に不可欠であること、二つ目は私の関心が現在スピノザの人間観と社会観に向いているため、当時の法的、政治的な観念を参照するのに適していることから、この研究科に現在所属しています。

ちなみに上の画像は中世教会法の注釈書です。中世の法学は、解釈される法的なテクストに詳細な注釈をつけます。それによって読む者をうんざりさせることができます。え、この記事のようだって?

好きなこと



フランシスコ・デ・ゴヤ『時間・真理・歴史』



史学史
 素人の歴史好きとして、歴史はそもそもどう描かれてきたか(historiography史学史)という点に興味があります。それに沿って書籍を読むことが多いです。
・今起こっている問題に集中する同時代史を志向するもの
・ひたすら事跡を記述する年代記に終始するもの
・時代の人間を取り上げて毀誉褒貶を尽くす形のもの
・世界の全過程を一つの原理で説明しょうとするもの
千差万別の書き方がある歴史記述ですが、その背景にあるのはまさに、その時代に記述者(ないし記述者の属する社会)が世界をどう捉えようとしていたのかという意識だと思います。
 

おすすめの本


二冊ご紹介致します。第一に、私が研究対象にしているスピノザについて日本語の書籍をご紹介します。第二に、私の他の趣味に従って本をご紹介いたします。本当は、法学政治学について読みやすい本があれば紹介したいと思ったのですが、須加原さんと違って、とっつきやすい法学の本なんてない(※個人の感想です)のと、よく考えたらちゃんとこの分野を勉強していなかったことに気づいたのでやめました。
バールーフ・デ・スピノザ(1632-1677)の肖像画とされる。

『スピノザの世界――神あるいは自然』(上野修、講談社、2005)
 私はここからスピノザに入りました。(どこから出られるのかは定かではありません。)スピノザの思想体系、とりわけ主著『エチカ』の内容を概観するのにとても心強い入門書でした。上野氏はスピノザを中心に、ホッブズ、デカルトといった17世紀の哲学者の議論と、フランスの現代思想に精通されており、『デカルト、ホッブズ、スピノザ――哲学する十七世紀』(講談社、2011)では、各論文の中でその関連を明らかにしておられます。スピノザの哲学に関心があればぜひ。

”The Classical Foundations of Modern Historiography” (Arnaldo Momigliano,University of California Press,1990)

 史学史の泰斗、アーナルド・モミリアーノの遺稿をまとめたものです。濃密な議論から受ける刺激に大興奮です。この遺稿では様々な論点が扱われていますが、好きなことでお話ししたところと繋げると、1、2章ではギリシアの歴史叙説がどういう背景に成立しているかを、ペルシア、ヘブライの道具立てを使いながら鋭く分析していきます。そして、ヘロドトスやトゥキディデスといった歴史家が描き出そうとしたものを、当時の歴史家の意識を明らかにしながら鮮やかに描き出そうとします。

 

企画紹介


文系学部を取り巻く歴史と現状
明治期に、日本が国策として取り込んだ西洋の大学システムは、その起源を13世紀にまで遡ります。このシステムは、古代以来の学問観を継承しながら、日本とは異なる文脈の中で発展してきたものです。その過程は一筋縄ではなく、西洋世界の社会環境の変化に伴って、大学のシステムも様々な変化を被っていたようです。そうした文脈から取り出して、日本はある時期、ある地域の特定の大学モデルを想定し、それを継受しました。この企画では、まず開国以来日本が摂取した無数の異質な観念のうち、今日の文系学部が大学システムの継受の中で、どのような取捨選択を行ったのかに注目することで、文系学部の意義の問いかけに対して、その論点を明確にすること、次にそこから、文系学部が置かれている状況を描きたいと思っています。
・高大接続
それでは、駒場祭当日、112教室でお目にかかることを心待ちにしております。

 
 

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