メンバーのご挨拶&おすすめ本紹介②【須河原編】


フィールドワークを行った
鹿児島県・沖永良部島の農村風景

はじめまして。ジブン×ジンブン裏方担当の須河原(スガワラ)と申します。
自己紹介2番手ということで緊張しますが、ひとつよろしくお願いします。


なにをしているのかちょっとだけ紹介

ぼくの所属は「東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 広域システム科学系」です。尋ねてくる人にこの呪文を唱えると「何それ? 何やってるとこなの?」と必ず聞き返されますが、系全体として何をやっているのかは正直ぼくもよく分かっておりません。理系ばかりの研究棟の片隅でひっそりと人文地理学という学問をやっていますよ、ということだけ今はお伝えしておきます。

人文地理学というのは、これまた社会科学にも人文科学にもあるいは自然科学にも落ち着かぬ、雲をつかむような厄介な学問なのですが……(なぜそんな学問が名前に「人文」を冠しているのか、というのは興味深いテーマですから、のちのちへの宿題にしておきましょう)
ごくかいつまんで言えば、この世の様々な社会・文化現象を「空間」「地理」「地域」「景観」「場所」などを切り口に分析するところに特色があります。例えば、

・ある自然環境(気候・地質・地形など)と人間活動はどのように関係するか?
・人間活動(人口や産業、交通など)は国土や地域の中にどのように分布するのか?
・人間は空間をどのように認知し、意味づけるのか?(観光や宗教、政治など)

など、とても幅広いテーマを扱います。したがって研究関心は各自バラバラですし、方法に関しても、文学的視点から突き詰める人と、数式で語る人とが同じ屋根の下に住んでいる、そういう学問です。1つだけ彼らに共通する特徴を挙げるとすれば、地図を片手に野山へ街へ繰り出すのが大好きな人たち、ということでしょうか。野外調査フィールドワーク)とか巡検エクスカーション)などと、これを業界では呼んでおります。

ぼくはというと、モバイル・ライフスタイルと農業アルバイトをテーマに研究を進めています。特に2000年代以降、非正規雇用の拡大という社会状況と相まって、1か所にとどまらず流動的な生活を送る人々の数が増加してきました。これは必ずしも望むべくしての結果ではありませんでしたが、一方では昨今のいわゆる「Iターン」現象などにみるように、安定した地位を捨てて移動することへの心理的・社会的な障壁も低くなってきていると言えます。こうした現代人に浸透しつつある新たなライフスタイルを求めての「移動」と、他方で進行する農業・農村の人手不足と制度変化……この2つの関係をうまく解き明かそう、というのがぼくの野心です。扱う現象は社会科学的ですが、「移動」や「農村」に対する人の想像力意味付け、つまり人間の精神世界への視角が必要になるという意味では、人文学的とも言えるでしょう。


好きなこと

離島に行くのがすきです。これまで日本国内を中心に大小30の島を回っています。ぼくが地理学の門に入った理由の半分くらいはこれに尽きるかもしれません。ちなみにおすすめの島は東京の伊豆大島(初級)、沖縄県の南大東島(中級)、山口県の見島(上級)です。
伊豆大島
南大東島
見島
(ちなみに駒場祭の1週間前に、池袋で「アイランダー2018」という離島の祭典が開かれます。島に興味のある方はぜひ!
・漢文学にかぶれてます。かぶれてます、と言ってそこまで話せることは多くありませんが、学部生時代は副専攻で漢文学を取ったりしていました。特に春秋戦国~六朝期(6世紀)くらいまでの文学・思想史に興味があります。
・学問的に追究するほどではありませんが、苗字とか方言の話もそこそこすきです。というかご当地ネタは全般にすきです。
・文芸・映画・音楽等々はたしなみ程度に。最近だと「ペンギン・ハイウェイ」の映画が面白かったです(原作未履修)。アニメの路線で話すなら、望月智充監督とか中村隆太郎監督の作品がすきです。音楽なら谷山浩子、お笑いならラバーガールです。


おすすめの本

選ぶのが難しいですね…1つだけ挙げましょう。

『荘子――古代中国の実存主義』
(福永光司著、中公新書)
1964年初版発行のロングセラー。著者・福永氏は日本の老荘思想研究の大成者とも言うべき大家です(長らく東アジアでは老荘思想の地位は儒学にくらべて低く、それゆえ近代の文学研究においても隅に置かれてきました)。著者自身の『荘子』理解に基づく独自の構成を取っており、原典の内容に沿った解説書というよりも、1つの読み物として楽しむことができます。内容もさることながら見るべきは原典の書き下し文で、翻訳としての訓読という営みの面白さをよく思い出させてくれます。有名な「胡蝶の夢」の逸話から一文だけご紹介しましょう。曰く、
昔ハ荘周(周は荘子の名)、夢ニ胡蝶トナレリ。栩栩然ヒラヒラトマイテ胡蝶ナリ。[……] 俄然ニワカニシテメザムレバ蘧蘧然マギレモナクシテレナリ。(62版 p.194。[……]は須河原中略)

この書き下しはやや易しいほうですが、初めて読んだときには、軽妙にしてしかも格調高さを失わない福永先生の筆致に目がくらんだものです。なお同氏のより解説書らしい著作として、講談社学術文庫の『荘子 内篇』もおすすめです。


……って地理ちゃうんかい!しかも3文やんけ!とツッコミが来そうですね。やっぱりもう1冊ご紹介します。

地域調査ことはじめ――あるく・みる・かく
(梶田真・仁平尊明・加藤政洋編、ナカニシヤ出版)
とっつきやすい地理の本はたくさんあるけど、外向けのとっつきやすい地理「学」の解説書ってなかなかないな……というところで思いついた本がこちら。タイトルからは一見フィールドワークの教科書のように見えますが、実はこれ、様々な分野の地理学の先生方が、学生時代に地理学を志してから自分の論文をまとめるまでの体験談をまとめた本なのです。地理学がどんな対象を扱い、どんな方法を用い、どのように論文を書き、どんな慣習や苦労、面白さがあるのか、という学問のリアルが凝縮された一冊。地理学の外を見渡しても、こういった本はなかなかお目にかかれないのでは。門外の方にもぜひ読んでいただきたいなと思い、ピックアップしました。

企画紹介

いかがでしたでしょうか。「まとめ」と銘打つにはあまりにも内容が散らかっている気もしますが、元よりまとまりのない人間なのでお許しください。
さて最後に、駒場祭当日ぼくが担当するコーナーを簡単に紹介して終わりたいと思います。

・ジンブンアトラス

「人文学って言うけれど具体的にどんな学問があるの?」「それぞれどんな研究をするの?」という疑問を、実際の研究の対象となる絵画や文章などを使って、各分野の着眼点の違いから解きほぐしてみよう、という企画です。最終的には、それぞれの学問の特徴を整理して人文学の「地図集(アトラス)」を描くことを目標にしています。

高大接続

特に駒場祭に来られる高校生の方を対象に、「高校の勉強と大学の学問ってどうつながるの?」というテーマについて掘り下げます。皆さんにもおなじみの高校の教科書や、人文系院生へのアンケートを使って解説します。

それでは駒場祭当日、112教室にてお待ちしております!

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